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敵
てき |
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作品ID | 53651 |
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著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 |
入力者 | kompass |
校正者 | 小林繁雄 |
公開 / 更新 | 2011-08-31 / 2018-12-18 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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鶉や鷓鴣の飛びゆくかなたに
ふたたび白堊の城は現はれ 風のやうに消えてしまつた。
人夫よ はやく夏草を刈りつくせ
狼火をあげよ 烟を空にたなびかせよ
空想の陣幕を野邊にはつて
まぼろしの宴樂をほしいままにせよ。
ああこのばうばうたる白日の野邊を訪ねて行つても
むかしの失はれた幸福に出逢ひはしない。
大風の吹く城の向うで
化猫草の穗のゆらゆらとうごいてゐて
なにものか
かなしい追憶の敵が笑つてゐる。