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南京陥落の日に
なんきんかんらくのひに |
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作品ID | 53654 |
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著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 |
入力者 | kompass |
校正者 | 小林繁雄 |
公開 / 更新 | 2011-08-31 / 2018-12-18 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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歳まさに暮れんとして
兵士の銃劍は白く光れり。
軍旅の暦は夏秋をすぎ
ゆうべ上海を拔いて百千キロ。
わが行軍の日は憩はず
人馬先に爭ひ走りて
輜重は泥濘の道に續けり。
ああこの曠野に戰ふもの
ちかつて皆生歸を期せず
鐵兜きて日に燒けたり。
天寒く日は凍り
歳まさに暮れんとして
南京ここに陷落す。
あげよ我等の日章旗
人みな愁眉をひらくの時
わが戰勝を決定して
よろしく萬歳を祝ふべし。
よろしく萬歳を叫ぶべし。