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てんぷらの茶漬け
てんぷらのちゃづけ |
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作品ID | 54974 |
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著者 | 北大路 魯山人 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「魯山人味道」 中公文庫、中央公論社 1980(昭和55)年4月10日 |
入力者 | 門田裕志 |
校正者 | 仙酔ゑびす |
公開 / 更新 | 2012-11-18 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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てんぷらの茶漬けは油っ濃いもので、油っ濃いものの好きな方に好かれるのは無論である。
揚げたてのてんぷらを茶漬けにするのはもとより差支えないが、本来、てんぷらの茶漬けは古いてんぷらの利用にある。昨日の残りのてんぷらだとか、一旦、冷え切ったものを生かして食う食い方である。それにはまず火鉢に網を載せ、一旦、てんぷらを火にかける。いくぶん焦げができるくらいに火をあてる。それを熱い飯の上に載せ、塩を適宜にかけるのである。
前にまぐろの茶漬けで話したように、濃い目の熱いお茶をかける。御飯の量は、みずからの腹具合に相談して、盛ったらよい。ただ、ここに注意すべきは、てんぷらの茶漬けは甘いものを嫌うが故に、てんぷらのつゆをかけてはならぬ。必ず生醤油か、塩をかけるべきである。
大根おろしは新鮮なものほどよく、辛い大根があれば、なおさら具合がいい。要するに、てんぷらの茶漬けは、残ったてんぷらを生かして食べる方法である。焙るため油がこなれ、香ばしくて、意外に美味しいものである。材料になるてんぷらが、良質のものでなければ、美味しくならないことは言うまでもない。
(昭和九年)