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遠州の墨蹟
えんしゅうのぼくせき
作品ID55056
著者北大路 魯山人
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人書論」 中公文庫、中央公論新社
1996(平成8)年9月18日
入力者門田裕志
校正者木下聡
公開 / 更新2020-07-23 / 2020-06-27
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 小堀遠州といえば、先ず第一に京都の桂離宮を思い出す人も多いことであろう。また、お茶の世界になじんでいる人々は、ここに掲げたような墨蹟や、あるいは遠州作の茶杓花入れを思い浮べる人も多かろう。総合芸術家としての遠州は、広く芸術のあらゆる部門に優れた仕事の足跡を遺している。信念に成る力強さと同時に、洗練された才気が静かな輝きを放っている。
 遠州の書は定家に類した書風で有名だが、隷書は独得のものである。漢隷にも明隷にも拠る所なく、純粋の幽風を成していて、石川丈山と共に一家を成しているのがうれしい。殊に、茶碗その他、箱書付に見る隷書は、すばらしい能書として尊敬するに足る。
(昭和二十七年)



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