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河井寛次郎氏の個展を観る
かわいかんじろうしのこてんをみる
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人陶説」 中公文庫、中央公論社
1992(平成4)年5月10日
入力者門田裕志
校正者木下聡
公開 / 更新2018-08-24 / 2018-07-27
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 今年も高島屋であなたの陶器展を見せてもらいました。あなたは会場におられなかったようでした。
 また例の病いを出して頭ごなしに言うわけではありませんが、あなたの作陶は土の仕事がまずいですね。高台などと来るとまるで成っていませんよ。
 しかし、新しい好みの釉薬となると、これはいつもながら、あなたの独擅場だけあって、うまいものですね。ここまで来られたら、こんどは寂びた釉、侘びた釉に手をつけてもらうんですね。
 それはそうとあなたの作品には、英人リーチ、李朝、柳説と、この三つの先入主があって、それが随分、今日のあなたに災いしていますね。
 この先入主は、最初のあなたには益友であったでしょうが、今では却って邪魔ですね。ここらで一つ足を洗って方向をお転じになってはいかがです。
 それから、あなた、失礼な話ですが、絵の力をもっともっとお付けにならんといけませんね。絵のことでは、あなた自身が随分不自由をしておいででしょう。僕はあなたが絵と書を十分に身にお付けになったらと、いつでも思いますよ。
 僕はお宅で、たった一度しかあなたにお目にかかりませんけれど、お別れするとき随分好い感じを受けたんです。品の良いこと、素直なこと、若いことなどです。
 それにあなたは今の作陶家中稀に見る芸術家肌であることがいいですよ。
 帝展工芸の作陶家たちは質が悪いですね。袴もはかれるし、モーニングも着られますが、どう見ても、仕事になると職人は職人ですね。例外が多少ないでもありませんけど。
 そこへ行くと、あなたでも、浜田、富本の両君でも、芸術家的なのが何より尊いですよ。これが根本ですからね。
 しかし、世間では芸術家の仕事と職人の仕事を、同じようにしか見ない人がありまして困りますね。
 ときに河井さん、陶器は何と言っても土の仕事ですよ。トトヤの茶碗が馬鹿値に売れるのも、古備前が高いのも、南蛮が喧しいのも、みな土の良さと土の仕事の美しさです。土の仕事さえものを言うなら絵がなくても、美麗な釉薬が掛からなくても、鑑る人はちゃんと鑑て、あらゆるものの上座に置いてくれています。絵や釉を着けるとしても、やはり、土台である土の仕事が物を言いますね。
 僕は率直に言いますが、あなたでも、浜田、富本の両君でも、土の仕事は随分ご油断と粗忽があると思いますね。それから絵も字もいけませんね。しかし、今度の高島屋で見ると、あなたの草の絵は随分お手が上がったようです。これでは浜田君も富本さんも、もう敵ではありませんね。この調子ならぐんぐん上達しますでしょう。だが、もっと色々の絵が自由にならんと不自由ですね。同じ一つ絵を壺によし、盒子によし、茶碗にもと、無暗に一つの図をお着けになるのは、心細いじゃありませんか。殊に多数の作品を陳列した場合は、見っともよくはありませんね。と言って、たとえあなたがこのままであっても、それはあなた…

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