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狂言『食道楽』
きょうげん『しょくどうらく』
著者北大路 魯山人
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人著作集 第三巻」 五月書房
1980(昭和55)年12月30日
入力者江村秀之
校正者栗田美恵子
公開 / 更新2020-12-21 / 2020-11-27
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

登場人物 大名 目 鼻 口 手 心 耳

大名 「まかり出でたるは、このあたりの大名でござる。われ日頃より、美食をなしてござれば、当年とって百一歳でござるが、これごらんあれ、栄養は満々点、ヒフの色はツヤツヤと、あの方の心臓もことの外つようござる。なんと方々うらやましうはござらぬか。老いてますます盛んとは、まことにそれがしのことでござる。ハハハハハ
    ただいま、食事も了ったれば、まず、ゆるりといたそう。ヤレヤレ、ヤットやなあ、どうやらねむうなってきたわ。腹八分目と、ことわざにいえば、きょうとても、八分目でひかえたにかかわらずこのようにねむいは、いかなこと、目があかぬわ、グータラグーグーグータラ」

舞台、暗転

目 「これは、目でござりまする」
鼻 「まかり出でたるは、鼻でござる」
口 「このものは口でござりまする」
耳 「わらわは耳でありつるぞ」
胃 「これは胃袋でござる」
手 「われこそは手にござりまする」
心 「まかり出でたるは、心でござりまする」
目 「よいぐあいに、うちの大名は、いねむりをいたしております」
鼻 「この間に、そっとぬけ出してまいってござる」
口 「さあさあかたがた、ゆっくりくつろいで語ろうではござりませぬか」
耳 「されば、輪になって、みなのもの、坐りや」
一同「かしこまってござる。かしこまってござりまする」
胃 「さてこそ、うちの大名が長生きをなさることは、ことの外喜ばしいことではござらぬか」
手 「いかにも」
一同「さようにござりまする」
心 「それというのも、つねづね食べ物に心くばらるるためと存じまする」
鼻 「いかがでござろう。きょうはうちの大名が、このように長生きをなさるを祝うて、長寿栄養の座談会をいたし、広う世界へ、公開いたそうではござらぬか」
目 「それはまた、一段と思いつきにござりまする」
耳 「しからば、心、そなた、司会をやれ」
心 「かしこまってござる。それなれば、真中にどーんと坐らせていただきとうござります」
耳 「よいよい、うちの大名はすみにおけぬお人じゃによって真中にきやれ」
心 「ハー」
鼻 「さればうちの大名は目から鼻にぬけるお人じゃによって、わたくしは目のそばに行きとうござる」
耳 「よいよい、行きや」
鼻 「ヘーイ」
耳 「さて、うちの大名は大そう口がわるいとの、世の評判じゃにより、口どのは、うしろの方へ、遠慮しや」
口 「これはしたり、なんと仰せられまする。口がわるいとはいかなこと、わたしあるゆえに、おいしいものも食べられ、長生きなされたものでござりまする。うちの大名の長生きは、みなわたしのおかげでござりまする。わたしがなかったならば、なんでものを食べまする。すべて食べ物は、わたしが食べるのでございまする。わたしは正座にすわりこそすれ、うしろの方へすわるのはいやでござりまする。なんと、耳どの、…

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